アルフレッド・アドラーの著作は自由に使える? 知っておくべき著作権の基本

アルフレッド・アドラーの著作権について 心理学(アドラー,フロイト,ユング等)
スポンサーリンク

「人生の意味の心理学」「嫌われる勇気」で有名なアルフレッド・アドラー。
彼の提唱する「アドラー心理学」は、現代社会を生きる多くの人々に、勇気と希望を与え続けています。
近年、自己啓発ブームもあり、アドラー心理学への関心はさらに高まっています。

そして、アドラーの思想に触れる中で、「彼の著作を自分のブログで紹介したい」「オリジナルの翻訳を出版したい」と考える人も多いのではないでしょうか。しかし、そこで気になるのが「著作権」の問題です。
アドラーの著作は自由に利用できるのでしょうか?

本記事では、アドラーの著作権について、わかりやすく解説します。
アドラーの思想をより多くの人に伝えたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。なお、本記事は著作権の基本的な考え方を整理したもので、法的助言ではありません。実際の利用にあたっては、後述する文化庁の情報や、必要に応じて専門家(弁護士・弁理士など)への確認をおすすめします。

スポンサーリンク

結論:アドラー本人の著作はパブリックドメイン

結論から申し上げますと、アルフレッド・アドラー本人が著した原著(ドイツ語・英語の原文)の著作権は、日本国内ではすでに消滅しており、パブリックドメインになっていると考えられます。

アドラーは1937年5月28日に亡くなりました。日本の著作権の保護期間は、現在は「著作者の死後70年」ですが、これは2018年12月30日の法改正(TPP整備法)で「死後50年」から延長されたものです。

ここで重要なのが、この延長は「すでに著作権が切れている作品をよみがえらせるものではない」という点です(遡及適用なし)。日本の保護期間は暦年主義といって、著作者が亡くなった年の翌年1月1日から数えます。アドラーの場合は1938年1月1日から起算され、当時の「死後50年」ルールでは1987年12月31日の終了をもって保護期間が満了していました。

つまり、アドラー本人の原著は2018年の延長より前にすでにパブリックドメイン化していたため、現在も誰でも自由に利用できる状態にあります。パブリックドメインとは、著作権などの権利が消滅した(または初めから発生していない)状態のことを指します。

ただし、ここでパブリックドメインになっているのは、あくまで「アドラー本人が書いた原文」です。日本語の翻訳書などには、別の人(翻訳者)の権利が新たに発生している点に注意が必要です。これについては後半で詳しく解説します。

パブリックドメインでできること:自由な利用例

アドラーの原著がパブリックドメインであることで、具体的にどのようなことができるのでしょうか?
以下に、自由な利用例をいくつか挙げてみましょう(いずれも「原文」を対象とした場合の例です)。

  • 翻訳: アドラーの原著を自分で日本語に翻訳し、出版したりウェブサイトで公開したりすることができます。
  • 出版: アドラーの原文をそのまま、または抜粋・編集して、書籍や電子書籍として出版することができます。
  • 朗読: アドラーの著作を朗読し、オーディオブックやポッドキャストとして配信することができます。
  • 上演: アドラーの著作を原作とした演劇を上演することができます。
  • 映像化: アドラーの著作を原作とした映画やドラマを制作することができます。
  • ウェブサイトへの掲載: アドラーの原文の全文または一部を、自分のウェブサイトやブログに掲載することができます。
  • 引用: アドラーの著作から文章を引用し、自分のブログや書籍で紹介することができます(引用の要件については後述します)。

このように、アドラー本人の原著は非常に自由度高く利用することが可能です。一方で、すでに出版されている特定の日本語訳をそのまま使う場合は話が変わってきます。次の章で見ていきましょう。

原文と翻訳の扱いの違い(ここが最重要)

アドラーの著作を「自由に使えるかどうか」を考えるうえで、もっとも誤解が多いのが、原文と翻訳の違いです。ここを正しく押さえておきましょう。

原文(ドイツ語・英語)の扱い

アドラーが自分で書いた原文(ドイツ語、または英語)は、前述のとおり日本国内ではすでにパブリックドメインです。原文をそのまま引用・転載したり、自分で新たに翻訳したりすることは、日本の著作権法上は問題になりにくいと考えられます。

翻訳書(日本語訳)の扱い

一方で、誰かが日本語に訳した「翻訳書」には、その翻訳者に新しい著作権(二次的著作物の著作権)が発生します。翻訳には訳者の表現上の工夫や創作性が加わるためです。

この翻訳書の著作権は、原則として翻訳者の死後70年間(現在のルールの場合)保護されます。したがって、アドラー本人の原文が自由に使えるからといって、書店で売られている特定の日本語訳の文章を丸ごとコピーして使うことはできません。それは原著ではなく、翻訳者の権利を侵害する行為になります。

整理すると、次のようになります。

  • アドラーの原文(独語・英語)→ 日本ではパブリックドメイン。自由に利用しやすい。
  • 市販の日本語訳の文章 → 翻訳者の著作権が生きている場合が多く、無断利用は不可。
  • 自分で原文から訳し直したもの → 自分の翻訳として利用できる。

知っておきたい注意点:編集著作物・人格権

翻訳のほかにも、注意しておきたい権利があります。「編集著作物の著作権」と「著作者人格権」です。

編集著作物の著作権

アドラーの複数の著作を集めた選集やアンソロジーなど、素材の選び方や配列に創作性がある編集物については、編集した人に「編集著作物」としての著作権が発生する場合があります。
この場合、収録された原文そのものは自由でも、その選集の構成をそっくり真似て出版するような利用には、編集者の許諾が必要となることがあります。

著作者人格権

著作権(財産権)とは別に、著作者には「著作者人格権」という権利があります。
これには、著作物を公表するかどうかを決める権利(公表権)、氏名を表示する権利(氏名表示権)、著作物の内容を勝手に改変されない権利(同一性保持権)などが含まれます。

著作者人格権は著作者本人だけに認められる一身専属的な権利で、譲渡や相続はできません。財産権としての著作権が切れた後でも、著作者が存命であれば人格権を侵害するような行為をしてはならないとされています。

例えば、アドラーの著作を著しく改変し、あたかもアドラー自身の言葉であるかのように公表することは、こうした趣旨に反する利用にあたる可能性があります。著作権が切れていても、アドラーの名誉や声望を害するような使い方は避けるべきです。

引用の要件:パブリックドメインでなくても使える方法

「市販の翻訳書の一節をどうしても紹介したい」という場合でも、著作権法が認める「引用」の要件を満たせば、許諾なしに利用できることがあります。これはパブリックドメインかどうかとは別のルールで、まだ著作権が生きている翻訳書にも使えます。

適法な引用と認められるための主なポイントは、おおむね次のとおりです。

  • すでに公表された著作物であること。
  • 自分の文章が主、引用部分が従という主従関係があること(引用が大半を占めないこと)。
  • 引用部分が、かぎ括弧や書式などで本文とはっきり区別されていること。
  • 引用する必然性があること(論評や紹介など、引用する目的が正当であること)。
  • 出典(書名・著者名・訳者名など)を明記すること。
  • 引用部分を勝手に書き換えないこと。

これらの要件を満たさず、必要以上に長く転載したり、出典を示さずに自分の文章のように使ったりすると、引用とは認められず権利侵害になり得ます。判断に迷う場合は、引用の範囲を最小限にとどめ、出典を丁寧に示すのが安全です。

実際に使うときの注意

ここまでの内容を、実際の場面に落とし込んで整理します。

  • 原文を使うのか、特定の翻訳を使うのかをまず区別する。原文は自由度が高く、市販の翻訳は権利が生きていることが多い。
  • 名言として広まっている一文は、出典が不明確だったり、後世の要約・意訳であったりすることがある。出典をたどれない場合は「アドラーの言葉とされる」といった表現にとどめると安全。
  • 翻訳書から紹介したいときは、丸写しではなく引用の要件を守る。出典(書名・著者・訳者・出版社)を明記する。
  • 海外向けに公開する場合は、その国の著作権法も確認する(次章を参照)。
  • 商用利用や大規模な転載を予定している場合は、念のため専門家に確認する。

アドラーの思想を広めよう:ルールを守って正しく活用

アドラー本人の原著がパブリックドメインであることで、彼の思想をより多くの人に伝えるためのハードルは大きく下がりました。これは、アドラー心理学の普及にとって、とても喜ばしいことです。

しかし、自由に使えるのはあくまで原文であって、何でもして良いわけではありません。翻訳書の著作権や編集著作物の著作権、そして著作者人格権の趣旨に配慮し、適切な利用を心がけることが重要です。

ルールを正しく理解して活用することで、アドラーの素晴らしい思想をより広く、より深く、未来へと繋げていきましょう。

まとめ:アドラー著作権のポイント

  • アドラー本人の原著(独語・英語)は、日本国内ではすでにパブリックドメインになっている。
  • 日本の保護期間は2018年に死後50年から70年へ延長されたが、すでに切れていた作品はよみがえらない(遡及適用なし)。アドラーは1937年没で、延長前に保護期間が満了していた。
  • パブリックドメインなのは原文。市販の日本語訳には翻訳者の著作権が生きている場合が多く、丸ごと利用はできない。
  • 翻訳書を紹介したいときは、引用の要件を守れば許諾なしでも利用できる。
  • 選集などの編集著作物や、著作者人格権の趣旨にも配慮する。

さらに詳しく著作権について知りたい方は、文化庁のウェブサイトなどを参考にしてください。個別の判断に迷う場合は、専門家への相談をおすすめします。

【補足】アメリカなど他国での著作権について

本記事では、主に日本国内におけるアドラーの著作権について説明しました。
しかし、アメリカなど他の国では、著作権の保護期間や、いつパブリックドメインになるかの考え方が異なる場合があります。

例えばアメリカでは、古い著作物については公表年を基準にした複雑なルールがあり、日本とは判定の仕方が違います。同じ作品でも、日本ではパブリックドメインなのに他国ではまだ保護されている、という食い違いも起こり得ます。
そのため、アドラーの著作を海外向けに利用する場合は、その国の著作権法を確認する必要があります。

海外で利用する際は、利用する国・地域の法律を確認し、適切な対応を心がけましょう。

コメント